カイエ

雑感や仮想

2019-01-01から1年間の記事一覧

貧しさ

簡単に裏返る好悪。丹念に繋ぎたい脳を。 俺は裏切りの中にいる。シャチは群れをなしている。 なぜ哲学者は身体を問題にするばかりで骨を問題にしないのか。 身体よりも骨の方が最後まで残る。 ゴミは道端に捨てないのに煙草の吸殻を捨て黒いサンダルで火を…

paionia『白書』5.正直者はすぐに死ぬ

金曜の夜の東京の電車内は地獄の様相を見せる。泥酔し今にも死にそうなサラリーマンがやっとのことで吊革につかまり、ともすれば嘔吐し、それを怪訝な目で眺めるだけで助けようとはしない人々を見る私もまた、傍観者の一人だ。 大の大人なんだから自己責任で…

Muhuan

就職先が決まれば将来への不安なんて消えてなくなると思っていたのだが、やはりそんな考えは甘く、常に不安である。不安をライプニッツは行動の原動力だと前向きにとらえた。不安だからこそ人間はそれを払拭するために努力する。確かにそう言われればそうだ…

夏物語

以前はとても好きだった作家の長編小説。彼女の筆致で描かれる、繊細鋭敏な心象風景。呪いかのようにのしかかる哲学的問い。そして何よりも、なぜ創造しなければ無であったものを創造するのか、という生殖への懐疑。これこそが、私が彼女の小説、そして彼女…

存在の起源

エスカレーターに乗りながら階下を見下ろすと、上がっていくにつれて小さくなっていく、幼子の寝顔があった。その幼子は、母親の手で頭と尻を支えられながら、何も怖いものがないように安堵の表情で眠っている。 安堵する、ということがどういうことか私には…

蛍灯

私あんたのことを思い出すばかりで さみしい灯りをじっと眺めてたわ 私あんたのことを甘やかすばかりで 大事なことはずっと隠してたわ 優しさだけが正しいなんて言われなくてもわかっているわ 私あんたのことが憎らしいばかりで 冷たい体をじっと揺らしてた…

桜桃忌

桜桃忌に『桜桃』を読んで太宰との訣別を決意した。「子供より親が大事」、「子供よりも、その親の方が弱い」などど、甘えている屑。だったら子供なんて作るなと思う。 自殺する人間が子供を作ってはいけない。弱い人間が子供を作ってはいけない。 今年、父…

けがれなき酒のへど

自分の人生を売り物、見世物にするということが、割と一般的になってきた世の中だけれど、私小説に文体が必要であるように、確立された独自のスタイルがなければ、ひどく陳腐なものになってしまうのだろう。それは方法に自覚的になるということであり、生き…

いつまでも小鳥

囚われて気づくのに君は 笑われて気づくのに君は いつまでも ひとり いつまでも おとり いつまでも ことり いつまでも 殴られて気づくのに君は 傷つけて気づくのに君は いつまでも ひとり いつまでも ニトリ いつまでも ことり いつまでも 嫌われて気づくの…

梅雨入り

あいつの顔面を血だらけになるまで鼻が折れるまで殴る妄想を何度も繰り返す。こういう気分になることが人生であと何度あるのだろう。自分の中に溜まっていく滓。いつの日か俺は犯罪者になるのではないかという恐れ。正気を保たなければならないとはわかりつ…

怖い話

欲が縦横無尽に走る。君は身動きできず目が回りそうになりながらできるだけその軌跡を追っている。どうにかしてこの喧騒から逃れようと背伸びしてみるけれど、つま先は頼りなく君自身は心許ない。 彼が歌う神にも届きそうな歌に君は光を見る。彼は狂気と正気…

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過信と猜疑の間で今日も揺れ動く 失うものなど何もないから恐れるものがないと思う このまま金が尽きて飯も満足に食えない生活が来ると思う 追い立てられるように 突き落とされるように 私は泥の中に軀を投げ出す

予感

いつかは音もなく 羽のような軽さで 北の方へ向かう 雪の花が舞い散る 間違い探しを 続けるのに飽きても 答え合わせは 永遠にできなくて うつる心たゆまぬように 僕は背中を触る これが進む道だとは 誰もわからないままで いつかは息もなく 水のような仕草で…