カイエ

雑感や仮想

怖い話

 欲が縦横無尽に走る。君は身動きできず目が回りそうになりながらできるだけその軌跡を追っている。どうにかしてこの喧騒から逃れようと背伸びしてみるけれど、つま先は頼りなく君自身は心許ない。

 彼が歌う神にも届きそうな歌に君は光を見る。彼は狂気と正気との狭間で身も心も削りすぎている。もうこちらの世界には戻ってこれない。それを悲しいと思っているのは僕らだけだ。

 朝四時半くらいの夏の朝。蝉が鳴き始める頃に高いところから飛び降りてみたい。朝の空気を全身に感じて、街の静寂を叩きつけるように、僕は落ちる。