カイエ

雑感や仮想

2018-01-01から1年間の記事一覧

paionia『白書』4.左右

ミドルテンポやローテンポの曲が多い『白書』の中で、この曲は比較的速いテンポで三拍子を刻んでいく曲だ。そしてすべてのパートのプレイは激しさを帯び、緻密な計算のもとで冷静かつ大胆に音が駆けていくようである。 なかでもドラムのプレイは、目の前でラ…

paionia『白書』3.暮らしとは

この曲はpaioniaの自主製作アルバム『女の子たち』に収録されている古くからある曲で、paioniaファンの間で再音源化が強く望まれていた名曲である。 「暮らしとは」という曲名だけで聴きたいと思ってしまう人も多いだろうし、ひとたび聴いてみれば否が応でも…

paionia『白書』2.田舎で鳴くスズメ

周りを青々とした田畑に囲まれた農道を走っていく。だだっ広いコンクリートの上に、どこまでも長く続く白い三本のラインが映える。左端の白いラインを平均台に見立てて、そこから落ちないように右足、左足、右足と足を前に出していくのだが、その動作はもは…

paionia『白書』1.バックホーン

世界史の授業中に机に突っ伏してぼんやりと窓の外を見ている。資料集を読んで歴史という物語の中に入り込むことは好きだったけれど、基本的に単純暗記が点数につながる世界史の受験勉強には身が入らず、いつの間にか科目自体も好きではなくなってしまった。…

蚯蚓

例年より早い梅雨明けを迎えた七月は、最後の足掻きをみせる湿気と焦燥にも似た暑さを孕み、憂鬱を助長するのに持って来いだった。急に干上がった地面の上には何匹ものミミズの死骸が散らばっている。黒よりの赤黒い塊となった紐状のものが小さく丸まって一…

静寂と静謐

中央線で立川から吉祥寺へと向かう途中、三人掛けの席の中央に座ってきた女性。彼女はキャリーケースを引き下げ、それを挟むように足を広げて座った。私は左端の席にいて、彼女と微かに肩が触れ合う。車内は静かでみなひとりだ。ふと気づくと彼女はハンドタ…

悪夢

女は悪夢を見やすい生き物である。これは仮説ではない。 毎晩悪夢にうなされる女はたくさんいる。夢の中で精神的にしろ肉体的にしろ傷つけられた女は、はたと目覚めると涙を流している。この涙は嘘ではない。生ぬるさが目尻から耳の方へと伝うことを感じると…

成長

ただの一度も思い出したことのなかった物事、それが不意に迫りくることがある。中学生の時に同じクラスで不登校だった女子生徒、彼女はまだ生きられているのだろうか。あの時期に学校に行かないという選択をできた人というのは実は早熟だったのかもしれない…